二人展を開催できる歓び
今秋、ペルーの画家オズワルド・ヒグチと陶芸家グラディス・フェルナンデス─彼女はオズワルドの人生の伴侶でもあります─の作品をプロモ・アルテでご紹介できることを、心から嬉しく思います。
詳しくは拙著『語学の西北──スペイン語の窓から眺めた南米・日本文化模様』(現代書館、2009年刊)所収の「わが良き友よ─ある日系人との出会い」に譲りますが、オズワルドとその家族は、私の最初のペルー留学(1990-91年)以来、常に全面的に支えてくれている無二の友でもあります。そんな親友を日本に迎えることができて、まさに感無量です。
しかしながら、私が今回の二人展の開催を嬉しく思うその理由は、もちろん私的な友情に留まるものではありません。なによりも歓ばしいのは、はるか南米の地に生を受けた芸術家の作品が、ある種の「普遍性」を湛えて私たちの胸に迫ってくるという事実を、こうして確認する機会を提供できるということです。
ヒグチという姓から容易に察せられるように、オズワルドは日本人の祖父母を持つ日系三世です。私たちは、中南米の画家全般に対してつい「ラテン性」を求めてしまうように、彼に対しては、加えて「日系」という「特殊性」までも嗅ぎ取ろうとするかもしれません。しかしそのことによって、オズワルドのいわば無国籍的な画風にもし失望を覚えるとするならば、それは誤っていると申し上げざるをえません。私たちは彼の作品に「日系」の痕跡を探し出すのではなく、むしろ、そうした
「特殊性」がいかに「普遍性」へと溶け出しているか ・・・・・ をそこに見出すべきでしょう。
オズワルドがいかに「普遍性」へと到達したのか、その鍵を握っているのは、あるいはパートナーであるグラディスなのかもしれません。互いに寄り添い、高め合ったその結晶をこうして一同に揃えることができたという点でも、今回の二人展の開催には意義があると確信します。
最後に、長年の夢であった今回の企画を実現してくださったプロモ・アルテの古澤久美子氏に、あらためて感謝を申し上げます。
後藤雄介(早稲田大学准教授、中南米史研究) |